雨に濡れた美術館はひっそりしていました。
おやつの時間にはまだ早い時間。
ブーツの靴音が響くので、シューズで来ればよかったと少し後悔しました。
今回の企画展で知った柳瀬正夢は、松山に生まれ、
ここ北九州の門司で多感な少年時代を過ごしていました。
1900年生まれだから、展示品を制作した年齢が分かりやすい。
ガラスの中の1915年とある創作ノートは思わず笑い声がでたほど、自由闊達なペンが額縁の中の絵など比べものにならないくらい楽しい。
ちょうど昨年ブームになった『海賊と呼ばれた男』が活躍した時代。
早熟な少年は軍靴の音を聞きながら門司を活写したようです。
私には手帳サイズの瑞々しいスケッチ画のほうが好みでした。
「猿の顔をした九州を愛した」少年。
セザンヌのようなタッチで描いた山の画のパネルに
「柳瀬にとって皿倉山はサントビクトワール山だったのかもしれない」とあります。
地元のものとして私ごとのようにとっても嬉しい。
でも。
その後の彼の人生とさまざまな画歴や資料をみていくと、
切ないの一言で片づけられない気持ちになりました。
戦時下の新聞に描いた尖鋭的な漫画。
美しい活字に添えられたモダンな挿絵や扉絵。
終戦前、画家は絵本などの挿絵も描いていました。
「やさしい日本の兵たいさん」という短い物語の挿絵に、涙がこぼれました。
たくさんの友人や仲間に愛された画家は、終戦直前に東京の空襲で落命。
戦争断固反対。
北九州市政50周年記念「柳瀬正夢 1900-1945 大正、昭和を駆けぬける」は
2014年2月2日(日)まで。
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